自己紹介の正解
趣味というほどのものでもないが、本を読むのが好きだ。
先日、部屋の掃除をしていたときに中学生の頃の自己紹介プリントがでてきたのだが、そこのマイブームの欄に「古本屋で良い本を探すこと」と書くくらいは、好きだ。
いま思えば、なかなか渋い。
そういえば小学6年生のとき、授業参観で僕らが書いた自己紹介を先生が発表し、みんなで誰か当てる、みたいなのをやった。
そのとき、趣味はチェス、好きな食べ物はエスカルゴと書いていた僕は、父兄の皆様方にそれがお金持の松本くんのものだと勘違いされ、正解発表で母に恥ずかしい思いをさせてしまった。
もちろん当時の僕は、パソコンの無料ゲームでチェスを数回やっただけだし、サイゼリヤで食べた初めてのエスカルゴに感動した、しがない小学生だった。
そう考えると、自己紹介というものは意外と難しい。
趣味か。昔テニス部だったけどいまやってないしなぁ。
読書、っていうほど本読んでないし。
筋トレは好きだけど全然詳しくないんだよね。
なんかいった手前、自分よりすごい人が出てきて、なんだにわかじゃんとか、その程度かよとか思われるの嫌だな。
特技なぁ…
人より秀でてるものなんて、俺にはないよ…
俺に生きてる価値なんか…
と暗い話にもなりかねない。
趣味とか特技とかって、なんだか言葉に重みがあって、深く考える人は考えてしまうのだ。
たとえば趣味が、「好きなこと」とか、「休日にすること」に。特技が、「人よりちょっと自信あること」とかに変われば、もっと気軽に言えると思うのだが。
それこそ小6のときみたいに周りの目をなにも気にしないで堂々とすることができる。
とはいえこっちがいくら気を使って「好きなことは本を読むことです」とか表現を変えても、あっちが「読書が趣味なんだ」と受け取っては意味がない。
いちいち「いやほんと趣味とか言えるほどじゃないんですけど」というのも面倒くさいし、実際は凄いけどあえての謙遜パターンもあり得るからややこしい。
んー。もう自己紹介やめちゃうのはどうだろう。
小さい頃を思い出して欲しい。
公園でたまたまそこに居合わせただけの子と、あれだけ楽しく遊んでいたではないか。
そう、名前も知らないあの子と。
一緒にいるうちに相手のことがわかっていくものだから、最初にごちゃごちゃいう必要はないのだ。
まあでも、名前くらいは名乗ってもいいか。
僕の名前は…
くまちゃんです!
自己紹介の正解はこれだ。
たぶん。